13.1 数量詞
13.2 数量の名詞
13.3 概数の表現
13.4 助数辞
13.1 数量詞
数量を表わす表現を見ます。代表的なものは「数量詞」です。「~詞」というと、一つの品詞のようですが、この本では名詞の下位分類としておきます。 数量詞というのは、数詞(名詞の一種)に助数辞の付いたもので、色々なものを数えるときに使うものです。
3 + 人 = 3人
数詞 助数辞 数量詞
このように複合的な形なので「数量句」とかなんとか呼びたいところですが、「数量詞」という名称が一般的なので、その名称を使うことにします。
数量詞の用法はいくつかあります。まず、名詞述語のように使えます。
こちらは200円です。
私の体重は60キロです。
私は体重が60キロです。
日本の面積は37万平方キロメートルです。
一坪は約3.3平方メートルです。
それから、「の」を伴って名詞を修飾することができます。
2千円の本 60キロの体重 3ヶ月の時間
5人の学生 6冊の本 3軒の店
先週、2万円の本を買いました。
ゆうべ3軒の店をハシゴしました。ああ、頭が痛い。
これだけのことなら、単に「数量を表す名詞」にすぎませんが、副詞のような位置に現れながら意味的には名詞を修飾するという用法があり、しかもそれがごくふつうの使い方としてあるところが興味深いものです。
まず、省略できない必須要素である場合から。動詞が数量そのものの存在を示す「ある」の場合と、期間の名詞を主体とする「たつ」の場合です。
私は体重が60キロあります。
日本は面積が37万平方キロメートルあります。
日本にきてから3ヶ月(が)たちました。
これらの例で数量詞を省略することはできません。
?私は体重があります。
×日本に来てからたちました。
ですから、必須補語のようなものですが、格助詞がついていないので補語としていいものかどうかわかりません。一つの解釈は、次の形が「元」にあって、そこから上の形が導き出されるのだ、というものです。
私は[60キロの体重]があります
日本は[37万平方キロメートルの面積]があります
日本に来てから[3ヶ月の時間]がたちました
ただし、どうして「体重・面積・時間」に連体修飾の「Nの」が必須なのかという説明がまた必要です。
次に、もっと一般的な例。
A.学生が5人教室にいます。
本を6冊図書館で借りました。
これも名詞修飾の形で言えますし、学習者にはその方が言いやすいようです。名詞を直接修飾している形ですから、意味がわかりやすいわけです。
B.5人の学生が教室にいます。
6冊の本を図書館で借りました。
この例では意味はだいたい同じようですが、Aの形のほうが自然で、日本語教科書によくでてくる形です。
しかし、Aの形になるのは、その補語が「Nが」か「Nを」の場合に限ります。
5人の学生に本を渡しました。 → × 学生に5人本を渡しました。
6台の車に積みました。 → × 車に6台積みました。
後の例の「車に6台」では、何かほかの「6台」の機械を(一台の)車に積んだような感じです。
3軒の店で買い物をしました。 → × 店で3軒買い物をしました。
5人の候補から知事を選ぶ。 → × 候補から5人知事を選ぶ。
「知事を5人選ぶ」わけではありません。
13.1 数量詞
この「Nを」は「場所を」でもいいようです。
橋を3つ渡りました。
また、意味の変わる場合もあります。
小説を100ページ読みました。
100ページの小説を読みました。
後の例ではその小説全体で100ページしかないと感じます。前の方は、何百ページかの中の100ページです。つまり全体量と部分量の違いがあります。
2リットルの缶ビールを買いました。
缶ビールを2リットル買いました。
も同じです。「缶ビール」を「2リットルの」が限定している(連体修飾)のと、単に「買った」量を表しているの(連用修飾)との差です。
「Nが」「Nを」でも言えない場合があります。
10kgの赤ん坊を抱き上げた。 → × 赤ん坊を10kg抱き上げた。
2千ccの車を買いました。 → × 車を2千cc買いました。
この例の場合、「10kg・2千cc」はそれぞれ「赤ん坊・車」の「量」ではありません。それぞれ「属性」です。属性を表す数量詞は補語の後におけません。また、「元の形」として前に出した
?私は60キロの体重があります。
というのも、なぜか何となく不自然な言い方です。
私は体重が60キロあります。
のほうがずっと自然です。
名詞のすぐ後に付ける言い方もあります。
学生5人が参加しました。
辞書6冊を比較します。
文体として少し硬くなるようです。話しことばとしてはあまり一般的ではありません。意味の違いは特にないようです。逆に名詞の前に置いて「の」をつけないこともあります。
5人学生を呼び出しました。
3匹猫を飼っています。
このように書くと変な感じがしますが、話し言葉では数量詞の後にごくわずかのポーズを入れて話せば自然になります。それをはっきり書き表せば、
5人、学生を呼び出しました。
のようになります。
数量詞をふつうの補語のように使うこともあります。
(その)3人が私の家に来ました。
このリストの、初めの2冊が教科書で、次の3冊が参考書です。
しかし、この用法は基本的なものではありません。この「3人」は、文脈の中で特定された人間の中の「3人」という感じがします。つまり、前にでてきた名詞の替わりに使われるという特別な場合に限られます。「リスト」の例では、目の前にある特定の本の中の「この2冊」と「この3冊」で、数量を表しているのではありません。
学生が3人来ました。
本を5冊読みます。
という場合は、不特定の学生・本で、単に数を表しているだけです。
逆に、特定の人やものの場合、「Nの」の形で言わなければならないことがあります。
2人の女性を愛しています。
?女性を二人愛しています。
「愛している」相手は当然特定の人でしょうから、「女性を二人」というとちょっと変です。けれども、
子どもを二人養っています。
なら言えます。当然、特定の二人なのですが。
?科学者を3人尊敬しています。
3人の科学者を尊敬しています。
精神的な意味の動詞だから、とも言えません。
女性が3人、ゲームを楽しんでいます。
どんな場合にちょっと不自然な例になるのか、よくわかりません。
述語が動詞でない例もあります。
お金が50円不足です。
特別な薬が3種類必要です。
どういう述語が言えるのかもよくわかりません。ほとんどは動詞ですが。
以上は、数量詞が意味的に名詞を修飾している場合でしたが、単に述語を修飾する場合もあります。時間表現や回数を表す「-度・回」、それに距離の表現などがそうです。
会議は開始が1時間遅れました。
日本に5年間住んでいます。
中国には3度/回 行きました。
毎日5キロ走ります。(道を5キロ?)
駅から1キロ離れています。
比較の文型で、差の数量を表す用法もあります。
A市はB市より(人口が)5万人多いです。
これはあれより(値段が)千円も高いです。
数が特定できない場合の表現もあります。
数人の学生 学生が数人 学生数人が
牛を千数百頭飼っています。
疑問の表現は「何-」です。
今日は何キロ走りましたか。
あなたの学校は留学生が何人いますか。
この場合、「何」は常に「なん」と読み、「なに」とは読みません。
13.2 数量の名詞
数量表現として重要なものに、数量を表わす名詞があります。
みんな(みな)・全部・大部分・半分・一部・全員
これらは名詞です(「が・を・に」などをつけて補語にできます)が、数量の副詞として連用修飾にも使えます。名詞のすぐ後につけることもでき、この点でも数量詞に似ています。
みんな/全員 が賛成した。
委員は みんな/全員 賛成した。
委員 みんな/全員 が賛成した。
委員は みんな/全員 が賛成した。
全員の委員が賛成した。(×みんなの委員)
「~は~が」の形が言えるところが数量詞と少し違います。
?学生は5人が来ました。
「ほとんど」は副詞ですが、「ほとんどの教師が」と言えます。
教師のほとんどが参加した。
教師はほとんど参加した。
教師はほとんどが参加した。
13.3 概数の表現
数量を表す場合、だいたいの数を言う場合があります。
だいたい50人ぐらいでした。
一人当たり約3万円です。
この休みに、5日ほど旅行します。
そこで3年ばかり働きました。
3時頃(に)来て下さい。
数量の前には「だいたい・約・およそ」などが、あとには「-ぐらい(くらい)・ほど・ばかり」などがつけられます。「約」を使うと、数量のあとには「-ぐらい」などをつけません。「-ごろ」は時刻を言う場合の表現です。「-ぐらい」がいちばん話しことばでよく使われます。「-ばかり」は、その数が大きくないという意味合いも含みます。
数がきりのいい数だと、「ちょうど」を使います。
人がちょうど600人来ました。
13.4 助数辞
初級の教科書にはよく助数辞の表が出ています。発音の変化に注意しなければいけないからですが、文法の問題とは言い難いのでここでは扱いません。それにしても、なぜ「さんぼん・よんほん(三本・四本)」なのに「さんぷん・よんぷん(三分・四分)」なのだろう、とか、「四月四日四時四分」「九月九日九時九分」のそれぞれの数字の読み方の違いに頭を悩ませている学習者を見ると、教師としては、もう少しやさしかったらよかったのに、と思わずにはいられません。
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