14.1 こと 14.10 せい
14.2 もの 14.11 おかげ
14.3 ところ 14.12 まま
14.4 わけ 14.13 とおり
14.5 はず 14.14 かわり
14.6 つもり 14.15 くせに
14.7 の 14.16 わりに
14.8 よう 14.17 ほう
14.9 ため 14.18 たびに
名詞の中に、「形式名詞」と呼ばれるものがあります。「形式名詞」の範囲は説によってずいぶん違いますが、その中の主なものをあげておきます。
A こと、もの、ところ、わけ、はず、つもり / よう、の
B ため、とおり、まま、おかげ、せい、くせ、かわり、ほう・・・
これらは、独立した名詞としての用法のほかに、実質的な意味が薄まって、常に他の言葉によって修飾される用法でも使われるようになったものです。
その用法では、補語・連用修飾語になったり、複合述語を形成したり、また複文を作る要素としてもよく使われます。ここでは、単文の中で連用修飾の働きをする形をとりあげます。他の用法は、それぞれ「複合述語」「複文」のところを見てください。
上のAのグループは、述語を受ける用法が重要なもので、特に「-だ」をつけて文末の「ムード」となる用法があるものです。その場合、本来の名詞としての意味は希薄になり、用法も広く、いかにも機能的な語になります。それらの中で微妙な使い分けがあり、学習者には習得しにくく、日本語教師にとっても難しいものです。
この中で、「こと」と「ところ」は、名詞句を作るものとして「5. 名詞句」で用法の一部をとりあげました。
「よう」は、ふつう「ようだ」の形で助動詞とされるのですが、その活用形とされる「ような・ように」のさまざまな意味を考えると、助動詞として推量の意味よりもずっと広いので、「よう+だ」と分けて考え、形式名詞の仲間に入れることにしました。助動詞の「ようだ」は、形式名詞の「よう」の一つの用法と考えます。これとは逆に、「ようだ」のほかに「わけだ」「はずだ」「のだ」「つもりだ」などをすべて助動詞としてしまう考え方もあります。
「の」は名詞とは言いがたいのですが、よく形式名詞に入れられ、「こと」や「わけ」と比較されます。
Bのグループは、述語を受けて連用(修飾)節になる用法が日本語教科書でとり上げられることの多いものですが、ここでは単文の中での連用修飾の用法にしぼって例をあげて行くことにします。連用節の用法は「複文」で取り扱います。
このグループは、それぞれの個性がはっきりしていて、形作る文型の意味も分かりやすいものです。その中で「ため」は、二つの大きく違う意味を持つ点で、他のものとは少し性格が違います。
以上のほかに、「だけ、ばかり、ほど、など」などを形式名詞に入れる文法書もありますが、そもそも「名詞らしさ」がずいぶん薄れていると考え、この本ではこれらを「18.副助詞」のところで扱います。
また、時に関する名詞「とき・まえ・あと・うち・あいだ」などは、「5.4 時を示すNのN」でとりあげました。それらが節を受ける用法は「48.時の連用節」で扱います。
では、名詞や連体詞を受けて名詞句を形作り、補語や連用修飾語となる用法を、一つずつかんたんに見て行きましょう。
14.1 こと
形式名詞の中で、「こと」と「もの」がいちばん抽象的です。
「こと」は動作・現象を示します。「もの」と比べるとその違いがはっきりします。
どんなこと/もの がありましたか。
どんなこと/もの が好きですか。
「どんなこと」とすると、「事件」や「旅行」や「音楽を聞くこと」などの「事柄・行動」になります。「どんなもの」は具体的な品物を表す名詞になります。
また、「こと」は思考や言語活動の対象を表します。名詞の中の[こと]名詞と対応します。
どんなことを考えていますか。
彼女がこんなことを言いました。
それ、どういうこと?(を意味するのか)
一般の名詞はそのままでは思考や心理の述語の対象とならないので、「Nのこと」という形にします。これは前に述べました。(→「5.7 Nのこと」)
彼女のことを考えています。 (×彼女を考える)
自分の論文のことを話しました。(×論文を話す)
述語を受ける形は、ムードや複文として扱います。「こと」は非常に多くの文型の中で使われる重要な形式名詞です。
カタカナを書くことができます。 →「25.3 可能」
走ること/の が好きです。 →「57.名詞節」
試験に遅刻したことがあります。 →「24.アスペクト」
大きいことはいいことだ。 →「57.名詞節」「56.連体節」
風邪をひいたら、よく寝ることだ。 →「40.その他のムード」
うれしくないことはない。 →「43.否定」
行くことは行くけど、手伝わないよ。→「54.その他の連用節」
予算がないことにはどうにもならない。→ 〃
これらの中で、
V-ことができる
V-こと/の が すきだ/きらいだ/じょうずだ/へただ
V-たことがある
などは初級の早いうちに出されるおなじみの文型です。この「こと/の」の使い方は「57.名詞節」でくわしく見ます。
「~と(いうの)は~(の)ことだ」の形で定義の文型になります。名詞も述語も入れられます。述語を入れる場合は、やはり「57.名詞節」に。
ナ形容詞と(いうの)は、学校文法の「形容動詞」のことです。
バージョンアップとは有料で欠陥商品を取り替える手段のことだ。
科学的に考えるとは、すべての仮説を疑うということです。
最後の例の「~ということ」という形は非常によく使われる形です。
14.2 もの
名詞はほとんど「もの」で表せます。具体的な物も、抽象的な物も。人も、漢字では書き分けますが、モノ扱いをして「者」と言う場合があります。
どんなものを買いましたか。
愛というものは不思議なものです。
こういう者が訪ねて来たら、待たせておいて下さい。
次の例は修飾語のつかない用法です。言語・思考の動詞の対象をばくぜんと示します。
ろくにものも言わない
ものを書く
ものを思う/ものを考える
述語を受けて、ある種のムードを表す場合は別に扱います。(→「40.その他のムード」)
人生とはうまく行かないものだ。
何とかできないものか。
つぎの「もの」はどう考えたらいいでしょうか。動詞「逃げる」は「もの」ではありませんが。
ここまでやって、投げ出すというのはどんなものか。
「~というのはどんなものか」全体が慣用的な表現となっていると考えておくことにします。
複文を形作る用法もあります。(→「47.逆接」)
何とか答えを書いたものの、自信はありません。
14.3 ところ
もちろん場所を示す名詞を代表しますが、それ以外にもいろいろな用法があります。
どんな所に住んでいますか。
[ところ]名詞でない名詞を、[所]の補語として使いたい場合に、「Nのところ」の形にします。このことは前に述べました。(→「5.3.2 Nのトコロ」) あとで私のところに来て下さい。
「場所」というより、部分・特徴などの意味で「ところ」を使います。
彼のどんなところが好きですか。
このソフトは、こういうところがよくできています。
その他、場面・状況・様子・具合・時期など、さまざまの意味合いで使われます。学習者にとって使いにくい言葉です。
どうすればいいか、難しいところですね。
まあ、こんなところでしょう。
このところ暑い日が続いています。
お忙しいところをお邪魔します。
述語を受けて、名詞節を作ります。(→「57.3 V-ところ」)
あくびをしているところを先生に見られた。
ちょうどうわさをしているところへ当人がやって来た。
また、アスペクトの一種を表します。(→「24.9 V-ところだ」)
ちょうど始まる/始まった ところです。
「V-たところ(が)」は逆接、「V-たところで」は条件になります。(→「47.逆接」「49.条件」)
説明のとおりやってみたところが、うまく行かなかった。
試験の前の日にあわてて勉強したところで、もう遅い。
この用法や、接続詞の「ところが」や「ところで」は、もう別のことばと考えた方がいいでしょう。
14.4 わけ
「わけ」というのは、「意味・事情」などの意味ですが、述語を受けて文末のムードなどを表す用法と、文のつながりを示す用法でよく使われます。初級よりも中級以上で扱われることが多くなります。
まったくわけがわかりません。
詳しいわけを話して下さい。
どういうわけでこうなったのですか。
なるほど、そういうわけですか。
「V-わけにはいかない」(→「25.3 可能」)
秘密を話すわけには行きません。
「V-ないわけにはいかない」(→「36.義務・必要・不必要」)
私は行かないわけにはいきません。
「~わけがない」(→「39.断定・確信」)
夏に雪が降るわけがない。
「~わけだ」(→「63.説明」)
結局、2万円集まった。一人千円ずつ出したわけである。
14.5 はず
ふつうの名詞としての用法はほとんどなくなり、「はずだ」などの形でムードを表す複合述語を作ります。(→「39.断定・確信」)
もうそろそろ着くはずです。
彼が知らないはずがありません。
会議は午後のはずです。
「時間に間に合いますか」「そのはずです」
「午後のはずだ」は「Nの」を受けていますが、「会議は午後だ」という文を受けているものとみなして、複合述語のところで扱います。
「そのはず」の「その」は内容的に前の文を受けています。これは「連文」の問題です。(→「62.3 文脈指示語」)
14.6 つもり
これも、「~つもりだ」などの形で意志のムードを表す複合述語になります。(→「32.勧誘・意志表現」)
もう一度やってみるつもりです。
二度と行くつもりはありません。
「この絵は何をかいたのですか」「猫のつもりですが・・・」
うまくだましたつもりだったが、・・・
「あなたも買いますか」「そのつもりです」
「Nの」を受けている「猫のつもりだ」の例と、「だましたつもり」の例は、本当はそうとは言えない場合の「思いこみ」の例で、「40.その他のムード」でとりあげます。
「そのつもりだ」の「その」は、「そのはずだ」と同様に文脈指示で、文相当の内容を受けています。
14.7 の
「の」は「NのN」以外にもいろいろな用法があります。その一つに、名詞の代わりに使われ、ふつう「形式名詞」とされる用法があります。けれども、「の」はそもそも「名詞」とは言いがたいものです。
その大きいケーキをください。
その大きいのをください。
のような例で、「の」が「ケーキ」の代わりに使われるところから、形式名詞の仲間に入れられるのでしょう。名詞の修飾語が「Nの」の場合は、
私のケーキは大きいです。
私のは大きいです。
のように「ケーキ」が省略されるだけになります。
また、「の」は複文を作るために重要な役割を果たします。
ケーキを作るのが好きです。
ケーキが大きいのはいいことです。
の「の」は、「ケーキを作る」を一つの名詞のように扱うための「名詞化」の機能を持っています。この「の」は「こと」との使い分けが問題になります。これは「57.名詞節」でとりあげます。
強調構文と呼ばれる次の文型でも、「の」が重要な役割を果たします。
(彼女は4日にここへ来た)
彼女がここへ来たのは4日です。8日ではありません。
この文型も「57.名詞節」で。
14.8 よう
「ような・ように」はふつうは推量(比況)の助動詞「ようだ」の連体・連用修飾の形とされます。三つとも「Nの」に接続します。
Nのようだ 今日は雨のようだ
NのようなN 雨のような雲行き
NのようにV/A 雨のように降る/冷たい
それぞれの意味については細かく考えなければなりませんが、形の上では、とりあえず上のように三つに分けられます。
述語を受け、「推量」の意味を表す「ようだ」については複合述語の「ムード」として扱います。(→「38.5 ~ようだ」)
彼は忙しいようだ。
彼は来ないようだ。
次の会議は来月のようだ。
最後の例は「Nのようだ」の形ですが、単なる名詞ではなく名詞述語と考えられるので、複合述語とします。(「次の会議は来月だ」+ようだ)
推量の意味の場合は、単なる「Nの」ではなく、名詞述語「Nだ」が「Nの」の形をとっていると考えたほうがいいようです。
述語を受けるそのほかの用法は、複文の「51.目的」「52.様子」「58.引14.形式名詞
用」のところで扱います。
鳥が来ないようにかかしを立てた。 (→「51.目的」)
彼女は、まるで鶴が舞うように踊ります。 (→「52.様子」)
早く直すように頼んだ。 (→「58.引用」)
以下では、名詞を受けて推量以外の意味を表す場合だけを扱うことにします。
14.8.1 Nのようだ
「~ようだ」は推量の用法が重要ですが、それ以外の意味にもなります。
彼の話し方は、偉い学者のようだ。(類似)
桜の花びらが、まるで雪のようです。(比喩)
14.8.2 NのようなN
「よう」は様子・様態の「様」です。「AのようなB」とは「Aの様子を持っているB」ということでしょう。もちろん、実際にはもっと意味の広がりがありますが。
例えば、「田中さんのような人」というと、どんな意味になるでしょうか。
1 田中さんのような人はあまりいません。
2 田中さんのような人は、こんな仕事はやらないでしょう。
例1では「田中さんに似た性質の人」ですが、例2では「田中さんその人」
でしょう。「田中さんは、田中さんが持っている性質から判断すれば、~」と
いう意味合いです。
「様子」を持っていることから「類似」の意味が出、「比喩」「例示」さら
には述語を受けて「推量」の用法も生まれます。これらの意味はつながり合っ
ていて、はっきり区別することは難しいです。
私もこのようないすが欲しいです。
現代のような時代は、今までにありませんでした。
彼女の、花のような美しさは母親ゆずりです。
彼のようなまじめな人が好きです。
どうも雨のような空の様子ですね。
最後の「雨のような空」は推量ではなく「様子」でしょう。
次のものはちょっと違ったものです。
以上のような問題点があります。
これは「例示」に近い意味合いですが、「以下のような」「次のような」、さらには「上に述べたような」「このような」という使い方につながっていきます。「連文」に関わる用法です。
指示詞の「この」の類を受けて、
このような・そのような・あのような・どのような
という形を作ります。
そのようなやり方はよくない。
このような辞書はたくさんあります。
どのような問題がありますか。
これらも、文脈によって「様子・類似・例示」などの意味合いになります。
14.8.3 NのようにV/A
以上の用法は、連用修飾をする「ように」の場合にも見られます。
彼女は日本人のように日本語を話します。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
東京のように大きな町は住みにくいです。
紙をこのように折り曲げてください。
この問題はどのように(して)解きますか。
動詞を受ける「ように」は「V-ようになる/する」という重要な文型を形作ります。(→ 28.3.2)
日本語が話せるようになった。
間違えないようにします。
以下の形式名詞は、複文を形作る要素として、教科書でよくとりあげられるものです。ここでは名詞を受ける「Nの~」の例だけをあげておきます。述語を受ける例は、複文のそれぞれの項を見て下さい。
14.9 ため だ/に/の
いくつかの違った意味になるので、注意が必要です。
人のために作る 会社のために働く (利益)
あなたのためを思って言うんですよ。
進学のために勉強する(目的) (→「51.目的」)
雨のために中止になる(原因) (→「50.理由」)
老後の生活の(安定の)ために
苦しい練習は、自分のためです。人のためではありません。
家族のために働く (利益)
家族のために苦労する (利益・原因)
文脈指示(→「15.指示語」)の「この・その」を受けて、
このため・そのため
という形を作ります。「?あのため」は使いにくく、「×どのため」は言いません。
崖崩れでJRが不通となった。このため/そのため、首都圏の足が大きく混乱した。
疑問の形は「何のため」となります。「利益」の場合は、「誰のため」などの形も使えます。
何のために勉強しますか。
誰のために働くのですか。
14.10 せい だ/で
何かがうまく行かなかった原因を表します。「おかげ」の反対です。
これはぜんぶ彼のせいです。
今年の不作は春の大雨のせいです。
この計画は彼の手抜きのせいで失敗しました。
自分のまちがいを人のせいにするのはよくありません。
疑問は「何の/誰の せいで」となります。「その」で前の文を受けます。
大型台風が来た。そのせいで、野球大会が中止になった。
述語を受ける用法は「50. 理由」でとりあげます。
私が失敗したせいで、みんなに迷惑をかけました。
14.11 おかげ だ/で
何かがうまく行った原因を表すのが基本ですが、皮肉な言い方では「せい」の代わりに使うこともあります。
すべてあなた方の御協力のおかげです。
彼女のおかげで成功しました。
天気がよかったおかげで、とてもたのしいハイキングだった。
あーあ、君のおかげでめちゃくちゃだよ。
「退院なさったそうですね」「ええ、おかげさまで」
述語を受ける用法は「50. 理由」でとりあげます。
みんなが手伝ってくれたおかげで、早く終わりました。
前の内容を受けて「その」を使うことができます。
みんなが助けてくれました。そのおかげで、早く終わりました。
14.12 まま だ/で/に/の
「その状態で、その状態を変えないで」という意味を表します。形容詞や状態を表す動詞に付くのがふつうです。名詞につく場合、その名詞からある状態を思い浮かべられることが必要です。指示語の「この・その・あの」につけられますが、疑問の「どの」にはつきません。連用修飾の時は、「ままで」の形がふつうです。
まだパジャマのままです。
りんごを皮のまま食べます。
このままずっとここにいます。 (×どのまま)
そのまま(で)、動かないで!
靴のまま(で)家に入る (靴をはいたままで~ →「52.様子」)
形容詞は状態を表しますから、「まま」をつけると、その状態を変えずに、という意味になります。
熱いまま、お皿に盛ります。
長いままでは食べにくいので、短く切ります。
白いままでは目立つから、これを上に掛けなさい。
「なる・する」に続く場合は、「ままに」の形をとります。
そのままにしておいてください。
動詞の過去形を受ける用法は「52.様子」を見てください。
窓を開けたままで寝てしまった。
14.13 とおり だ/に/の
「とおり」は「通り」つまり「道」で、「行き方・やり方」です。「それにしたがって、それと同じように」という意味を表します。指示語の「この・その・あの」を受けますが、「どの」は受けません。動詞を受ける用法は、やはり「52.様子」を見てください。
あの占いのとおりです。
地図のとおりに行きます。
その人は、彼女の話のとおりの変な人でした。
このとおりに作ってください。 (×どのとおりですか?)
そのとおりです。(相手のことばを受けて)
結果は、御覧のとおりになりました。
説明書のとおりに作ります。
(説明書に書いてあるとおりに →「52.様子」)
名詞に直接つけることができ、その場合は「どおり」になります。
予想/説明/予定 どおりです。
予想どおりになりました。
予想どおりの結果です。
14.14 かわり だ/に/の
あるNではなく、同じ働きをする別のものがその位置を占めることを表します。何かのために使う、あるいは使われる場合が多いです。
このコインはお金のかわりです。
病気の人のかわりに出席しました。
彼女の代わりの人はいますか。
これのかわりには何を使いましょうか。
形式名詞はいつもほかの語句に修飾されていますが、「おかげ・かわり」は修飾する語句がなくても使えます。
おかげで助かりました。
かわりの部品はありませんか。
述語を受ける用法は「55. その他の連用節」でとりあげます。
数学を教えてもらうかわりに、英語の勉強を手伝いました。
文脈指示の「その」を受けて使われます。
手伝ってもいいけど、そのかわりに何をしてくれる?
14.15 くせに
主体の性質から期待されることが満たされないために、主体を非難する気持を表します。
女のくせに男の仕事に口を出すな。
男のくせに編み物が趣味だなんて。
あまり学習者に勧められる表現ではありません。
先生のくせにこんなかんたんな漢字も知らないんですか。
述語を受ける用法は「55. その他の連用節」でとりあげます。
彼は文句ばかり言うくせに、自分の責任は果たしません。
文脈指示の「その」を受けて使われます。
彼は文句ばかり言う。そのくせ、自分では何にもしない。
14.16 わりに
互いに関係のある物事で、一方の程度と比べて他方の程度が大きく違うことを表します。
身長のわりに体重が少ない。
給料のわりに仕事が多い。
述語を受ける用法は「55. その他の連用節」で取り上げます。
この本は、長い時間をかけたわりには大したできじゃない。
この例のように、対比的な意味を強める「は」を付けることができます。
文脈指示の「その」を受けて使われます。
短い時間で作りましたが、そのわりにはよくできています。
14.17 ほう
方角を表す意味から、ある片側、二つのうちの一つを示す用法になります。「17. 比較構文」で重要な役割をはたします。
こっちの方が大きいです。
この紙は裏の方が書きやすいです。
忠告の表現といわれる「V-たほうがいい」などでも使われます。
あなたは行った/行かない ほうがいいですよ。
述語を受ける用法は「53.程度・比較・限定」で扱います。
紙を使うほうがテープで貼るよりきれいだ。
主体を表す「Nで」の場合によく使われます。(→ 6.1.2)
それは私のほうで何とかします。(×私で)
警察のほうで調べています。 (警察で/が)
「この・その・あの」を受けますが、「どの」は受けません。
このほうが速いです。(×どのほうがいいですか)
14.18 たびに
「AのたびにB」の形で、Aが起こるときいつもBが起こることを表します。
Aは何か繰り返される動作を示す名詞です。
食事のたびに歯をみがきます。
述語を受ける用法は、「55.その他の連用節」で。
うちに来るたびに何か持っていってしまう。
使えそうで使えない場合があります。
×朝/春のたびに 朝/春が来るたびに
文脈指示の「その」を受けられます。
電話が鳴ると、そのたびに台所まで行きます。
参考文献
吉川武時(編)2003『形式名詞がこれでわかる』ひつじ書房
グループ・ジャマシイ編著1998『日本語文型辞典』くろしお出版
森田良行1989『基礎日本語辞典』角川書店
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