19. 終助詞

             19.1 終助詞

             19.2 間投助詞

            

終助詞は、文のいちばん終わりについて、その文を言うときの話し手の、その文を受け取る相手に対する「働きかけの気持ち」を示す助詞です。聞き手に対して同意を求めたり、確認をしたり、強く主張したりします。「複合述語」のところで扱う「ムード」の類に似たものですが、形が小さく、それ自体は変化しないことが特徴です。学習者から見れば、特にはっきりした意味内容を持たないようにも見え、日本人がしきりに使うので何となくまねて使ってみる、というぐらいのものでしょう。しかし、日本人からすると、適確に使ってくれないとどうも落ち着かないものですし、意外に、使わなければ変に感じられる場合もあります。使い過ぎるのもうるさいものですし。なかなか、学習者にとっても、日本語教師にとっても難しいものです。

さて、初級の段階でまず出されるのは、日常の会話で特によく使われる「ね(え)」です。学習者が使えるようになるのは、「ね」のほかには「よ」ぐらいでいいでしょう。その他の終助詞は普通体で使われ、乱暴な響きになりがちです。疑問を作る「か」も終助詞とされますが、これについては疑問文のところでも述べます。(「普通体」については「22.文体について」を見てください)

 終助詞は、依頼・勧誘・命令・禁止(否定命令)など、さまざまな「ムード」のある文にも付き、その付き方の制限を記述することが必要です。それぞれのムードについては後でくわしくとりあげますが、ここで終助詞の付き方だけまとめておきます。


19.1 終助詞

19.1.1 ね(え):同意・確認

[同意]

話し手が聞き手とあることについて同じように考えている(感じる)ことを示します。または、聞き手にそうであることを求める言い方です。この用法を「同意」と呼んでおきます。

     1 「これはいいですよ」「本当にそうですね」

   2 「今日は寒いね」「寒いね」

   3 「疲れたねえ」「ああ、そうだねえ」

「よ」の主張(この用法は後で述べます)に対して、「ね」で同意したり、同意を求める「ね」に対して「ね」で答えています。これらの「ね」を省略すると、どうも落ち着かない文になります。相手に対して語りかけているという感じがしません。

   4「これはいいです」「本当にそうです」

   5「今日は寒い」「寒い」

   6「疲れた」「ああ、そうだ」

 特に同意を求めず、一人で感心しているような場合にも使いますが、やはり横に誰かいないと不自然です。例えば、展覧会で、

   7 田中「これいいねえ」

     山田「もう帰ろうよ」

     田中(無視して)「ふうん。やっぱりいいねえ」


[確認]

また、聞き手に対して何かを確認する時、「ね」を付け、上昇調で言います。

「確認」というのは、話し手にとって不確実な事柄を、確実に知っていると思われる聞き手に聞いて、その不確実さを埋めることです。これに似ているのが「疑問」ですが、疑問の「か」は、話し手がその事柄について知識がない時の質問です。「ね」は、たぶんそうだと思っても確かでないので確かめる時に使います。これも、広い意味で言えば、相手に、自分の予想に同意することを求めています。これは「ねえ」とはっきり伸ばすと変な感じがします。

    「これはあなたのカサですね↑」「はい、そうです」

    「あなたも行きますね↑」「はい、行きます」

    ?あなたも行きますねえ。  cf.あんたもやるねえ。

この「ね」も、つけないと「確認」の意味になりません。聞き手のことについて断定的に言うことになり、別の意味になります。

    これはあなたのカサです。

    あなたも行きます。

 「あなた」つまり聞き手のことに関しては、話し手より聞き手のほうが知っているのがふつうです。上の二つの例はその原則に反して、話し手が聞き手に教えていることになります。もちろん、聞き手が知らない、聞き手に関することを教えてあげるような場合はこれでいいのですが。それにしても、「あなたも行きます」という例では、聞き手が行くかどうかの決定を話し手がしているような感じがするので、かなり特別な状況になります。

 それに対して「確認」の「ね」をつけると、話し手が自分の不確かな判断を、よりよく知っている聞き手に対してもう一度確かに認めさせることになり、上の例のように自然な応答になります。

ですから、自分の意志的動作や自分の判断について「ね」をつけると変です。

     「あなたも行きますね?」「?はい、行きますね」

     「これでいいですね?」「?はい、いいですね」

学習者は、相手の考えに「同意」するつもりでこう言ってしまいがちです。この辺が「ね」の使い方の難しいところです。


[主張]

 もう一つ、自分の考えを相手にはっきり示す「ね(え)」があります。次で見る「よ」に近いものです。質問に対する答えのことが多いです。

     それは違いますね(え)。(相手の考えに反対して)

     私は、そうは思いませんねえ。

     「これでいいですか」「これではだめですね」

 これは「同意」でもなく、「確認」でもありません。

     それは違いますよ。

     これではだめですよ。

と言ってもいいところです。もちろん、受ける印象は違いますが。

 「ね(え)」をつけることによって、「だめです」と言い切った場合の強さを和らげ、厳しい内容を相手に納得させるような効果を持ちます。しいて言えば、相手を自分の主張に同意させようというわけです。「よ」だと、意見の対立をはっきりさせて相手を突き放してしまいます。

 もう少し軽い例。

     「3時になりましたか」「えーと、まだですね」

     「R-52というのはどれですか」「この小さいのですね」

 これらも「よ」が使えるところですが、それほど強くなく、ちょっと迷ったあとの答えだったり、相手に優しく教える風だったりします。


[依頼・命令と]

依頼の「V-てください」、「~なさい」の形の命令にも付きます。依頼や命令をしたあとで、さらに相手に念を押す気持ち(確認)です。命令形を使った強い命令にはつきません。(→「31.依頼」「34.命令」)

     きっと来てくださいね。

     明日の朝は早く起きなさいね。

     ×早く来いね。

 勧誘にも付きます。やはり「確認」の意味合いです。(→「32.勧誘」)

     いっしょに行きましょうね。

     あしたも遊ぼうね。

     これから私の家へ来ないかね。


[疑問文と]

上の例のように、疑問文の「か」の後に「ね」をつける場合があります。

     あした、君も行くかね?

     この件はどうなったのかね?

年配の男性が、立場が下の人に対して言っているようです。確認ではありませんが、それに近い「ね」です。「ねえ」とのばしません。

 質問でなく、迷っている気持をそのまま相手に投げかけるような場合は、同意を求める「ね」に近く、「ねえ」とも言えます。また、聞き手が目上でもよくなりますし、丁寧体の「です/ます かね」の形もあります。(質問でない「疑問文」については「42.疑問文」を見てください)

     先生、これでいいですかねえ。

     そろそろ始まりますかね。

     どう(です)かねえ。

 願望を表す場合もあります。

     雨が降らない(です)かねえ。

     雨が降らないかなあ。(「です」を入れるのは不自然)

 「なあ」と比べると、やはり聞き手の存在と、それに対する配慮を感じます。


[男女の使い方の差]

終助詞は男女の言葉の差がはっきり出るところです。丁寧体ではそれほどでもありませんが、普通体で、特に「だ」(名詞述語・ナ形容詞)を使うときの違いが大きかったのですが、今では差がなくなっているようです。

    男: きれいだね。 これだね。 見るんだね。

    女: きれいね。  これね。  見るのね。

 これは、ある世代(どこまでかわかりませんが)までの使い方で、若い女性同士ではこの「男」のほうを使うそうです。

日本語学習者に対して教師(少し古い世代)がしたしげに普通体でしゃべるようになると、教師と学習者の性別の違いが問題になります。教師の言い方を学生がまねる恐れがあるからです。日本人女性と結婚した外国人男性のことばが、妙におかしく感じられることがあります。


19.1.2 よ:主張・明示

自分のことばを聞き手に対して強く示します。この言葉は今聞いているあなたに向けられているのだ、という意味合いです。その内容によっては聞き手と対立する場合もあります。言わなくてもそれほど不自然ではありませんが、相手に対する訴えかけがなくなります。上昇調では特に相手に対して知らせるという面が強くなります。

   1 「この本は面白いですか」「ええ、面白いですよ↑」

   2 それはおいしくないですよ。やめたほうがいいですよ。

   3 「これ、おいしいですね」「いやあ、まずいですよ↓」

例1は、上昇調で、相手が知らないことを教えています。「よ」はつけなくてもいいのですが、つけると、単に質問に答えるだけでなく、相手にそのことをはっきり伝えようという気持ちが示されます。例3は、下降調で相手の考えとは違うことを強く主張しています。例2はどちらでも言えるでしょう。

相手の知らない、新しい事柄を伝える場合も、どちらでも言えます。

   4 さっき、田中さんが来ましたよ。↑/↓

 相手に注意を促すような場合は、上昇調になります。

   5 あ、カサを忘れていますよ! ↑

命令、依頼にも付きます。さらに確認し、押し付ける感じです。

     明日来てくださいよ。

     行きなさいよ。

     早く来いよ。

     行くなよ。

 それぞれ、上昇調と下降調で言えます。下降調の場合は、相手が自分の言葉に対して否定的な態度をとっている場合に、さらにうながす場合があります。

     今日のことはもういいから、明日は早く来いよ。↑

     ぐずぐずするなよ、早く来いよ。↓

 上昇調のほうがやさしい感じがします。下降調は、言い方によってはいらだちを感じます。

 命令形と否定命令「-な」についた場合は、逆に乱暴さが弱まり、親しみのある感じがします。「さらに確認する」という意味合いが、直接さを弱めるのでしょうか。

 疑問文の「か」の後に「よ」をつけることがありますが、男の乱暴な?言い方です。丁寧な「×ですかよ」という形はありません。質問というより、疑いの表明で、「本当はそうじゃないだろう」という気持ちが含まれることがあります。   

     やめるのかよ。いいのかよ。大丈夫かよ。

 さらには、反語の場合にも使われます。

     あいつがこんなところへ来るかよ。(絶対来ないさ)

 疑問語のある疑問文では「か」が削除されます。

     こんなこと書いたの、誰だよ。誰が書いたんだよ。

     電話した? いつよ。いつかけたのよ。

     見合いの相手って、どんな人よ。

     ×誰が書いたのかよ。


[よね]     

 「よ」と「ね」を合わせた言い方もあります。「よね」だけで、「×ねよ」という形はありません。「自分の主張」+「相手への配慮」という順です。

「よ」で主張し、かつ「ね」で聞き手に同意・確認を求めるという言い方です。

     これでいいよね(え)。

     会は3時からだったよね。

     田中さん、明日は休みですよね。

 ただし、もともと「よ」が付いているところに「ね」がつけ加わったわけではありません。最後の例で、「明日は(あなたは)休みですよね」という意味だとすると、

     明日は(あなたは)休みですよ。

というのは、聞き手に聞き手の知らないことを教えるという違った意味になってしまいますから、これに「ね」が付いたとは言えません。むしろ、

     明日は(あなたは)休みですね。

のほうが近い意味になります。しかし、これに「よ」が割り込んだとも言えません。「よね」で一つの終助詞と見なしたほうがいいのかもしれません。


[男女の使い方の差]

「よ」も「ね」と同じように、特に「だ」(名詞述語・ナ形容詞)との関係が難しいです。

   男   きれいだよ。 これだよ。 いいよ。

   女    きれいよ。  これよ。  いい(わ)よ。

 男ことばは「だ」を残しますが、女ことばは「だ」を省略します。イ形容詞では、昔は「わ」を入れましたが、ある世代から入れなくなり、今の若い女性では「男」ほうがふつうになってきているそうです。


19.1.3 な(あ)

 いくつかの違った用法があるので注意が必要です。

 a.禁止

 まず、動詞の基本形について強い禁止を表す用法があります。表記法として、「!」がよく使われます。そうしないと、他の用法とまぎれやすいからです。

     行くな!  そんなことをするな。  眠るな!

 b.くだけた命令

  動詞の中立形(「-ます」をとった形)につきます。

     ここはいいから、早く行きな。

     それはだめだよ。こっちにしな。

  「V-なさい」の省略形と考えられます。

 以上の二つは「34.命令」で、他の命令表現とともにまた取り上げます。どちらも「なあ」にはなりません。

 c.感嘆

  驚き、感心などの強い感情を示します。聞き手がいない場合の独り言でも使えます。 「なあ」と長く伸ばすのがふつうです。丁寧体にはふつう使いません。基本的には、男ことばです。

     きれいだなあ。

     疲れたなあ。

     よくそんなに早くできるなあ。

     いいですなあ。(聞き手を意識しながら、自分の感情を表す。年輩の男の感じ)

 d.確認

  独り言で、ポツリと言う感じです。自分自身に確認する場合と、聞き手を 意識して、自分の考えを相手の前に示す場合があります。後の場合は「ね」 に近いですが、丁寧体には使えません。基本的に、男ことばです。

     これはだめだな。

     君のやり方のほうがいいな。

     君に来て欲しいんだがな。

     おや、雨が降りそうだな(あ)。

     たぶんつまらないだろうな。

  質問調のイントネーションにすれば、もちろん聞き手に対する確認になり ます。確認の「ね」に近いですが、かなりぞんざいな言い方です。

     君も行ってくれる(だろう)な?

     これで十分だな?間違いないな?

     一緒に行こうな?

  「か」をつけた疑問文の後にもつけられます。積極的な質問ではなく、疑問を持っていることを相手に伝えるだけです。子供に対して柔らかく質問するときに、語尾を高く上げてこの形を使います。「なあ」のほうが答えを待っている感じがします。

     明日も晴れるかな。

     あの飛行機はどこへ行くのかな。

     ちゃんとはみがきできるかな?

     これでいいかなあ。

     いつ行くかなあ。

  「よ」の後につけることもできます。「よね」に似ています。

     まあ、こんなもんだよな。

     しっかりやってくれよな。

     いい加減にしろよな。

 依頼・勧誘の文型と共に使われます。 

     これを下さいな。

     頼むからそんなこと言わないで下さいな。

 少し年配の女性という感じがします。

     いっしょに行こうな。

 こちらは男性です。


19.1.4 わ

女性のことばですが、どんどん少なくなっているようです。丁寧体で使われることはほとんどなくなり、若い世代では普通体でもほとんど使われません。

小説の会話文で使われるのは、ことさら男女差を出すためのものでしょう。

     いいわ。/いいですわ。

     行くわ。/行きますわ。

意味は軽い主張で、「よ」に近く、最近は「よ」に取って代わられていると考えればいいでしょうか。もともと、「わよ」という形もあったのですが。

     そう、そうだわ。 → そう、そう(だ)よ。

     いい?いくわよ! → いい?いくよ!


19.1.5 さ

軽い主張を表す、かなりそっけない言い方です。男言葉ですが、女も乱暴さを示すためにわざと使うことがあります。丁寧体とは使えません。肯否疑問文には付きませんが、疑問詞疑問文にはつけられます。「だ」は省略されます。

     まあ、いいさ。

     やってもむださ。(×むだださ。)

     勝つに決まっているさ。

     え?、アメリカ行くって?いつさ。誰と行くのさ。

     これ、何のつもりさ。


19.1.6 ぞ

男のかなり乱暴な言い方です。強い主張を表します。聞き手がなくても(独り言でも)使えます。

     俺はあきらめないぞ。絶対に行くぞ。

     いいぞ。やれやれ。

     絶対にだめだぞ。おまえはまだ中学生だぞ。

     そんな事いうと、殴るぞ。


参考文献

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蓮沼昭子「終助詞「よ」の談話機能」小泉古稀記念『言語探求の領域』

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『新明解国語辞典 第五版』1996 三省堂


niwa saburoo の日本語文法概説

日本語教育のための文法を記述したものです。 以前は、Yahoo geocities で公開していたのですが、こちらに引っ越してきました。 1990年代に書いたものなので、内容は古くなっていますが、お役に立てれば幸いです。

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