基本述語型の述語にさまざまな形式がついて、複合的な述語になったものを「複合述語」と呼ぶことにします。この複合述語によって、基本述語型が実際の言語活動に必要な様々な意味を表わすことができるようになるのです。
ここでは、それらを大まかに整理・分類して、全体の見通しをつけておきましょう。まず、複合述語のかなり長く複雑になった例として、次の文をみてください。動詞「立つ」のあとに、いろいろな要素が続いています。
(あの場合)立たせられているべきではなかったのでしょうね。
tat - ase - rare - teiru - bekidewa - nakat - ta
動詞-使役-受身-アスペクト-当為-否定-テンス
- no - desyoo ( ne )
-説明-推量+丁寧(終助詞:確認)
それぞれの文法用語の意味するところは今は説明しませんが、このようにして単一の述語に多くの要素が接続して、様々な意味を表現します。大きく分けると、ボイス(受身・使役など)、アスペクト、テンス、それに様々なムード、丁寧さ、などとなります。ボイスとアスペクトは動詞だけのもので、形容詞・名詞述語にはありません。最後の終助詞は複合述語とは別に考えます。
次の例はイ形容詞の場合です。
短くなくてもいいはずだそうですよ。
mijikaku - naku - temoii - hazuda - soo - desu( yo )
形容詞 - 否定 - 許容 - 確信 -伝聞-断定+丁寧(主張)
複合述語の要素は、いわゆる助動詞「-られる・ようだ・まい」や補助動詞「(て)いる」などのほかに、複合的な形式のものが数多くあります。
べきだ、わけだ、(て)はいけない、なければならない、
(た)ことがある、にちがいない
日本語教育では、これらを一つのまとまり・単位として、いわば一語として扱います。そのほうが学習者にとってわかりやすく、また実際に使いやすいからです。
この本のいちばん初めで基本述語型を説明したとき、「~ます・~です」の形で出しましたが、厳密には「基本述語型」とは述語の語幹まで、と考えるべきでしょう。例えば「読む」の場合、
田中さんが本をyom-
までで、その後に
yom-i-masu
yom-da
yom-u-kamosirenai
など様々な要素が接続して、具体的な文ができあがるのです。
そう考えると、「読む yom-u」も「読みます yom-i-masu 」も、実はすべて「複合述語」ということになりますが、これらは一応基本的な形と考え、基本述語型の「述語」として扱ってきました。
なお、いわゆる「助動詞」は、全体としては複合述語の中に含みますが、いくつかは活用形の一部としたり、派生形を作る接辞と考えたりします。この本では、その扱いを厳密には考えません。以下のものは国文法(学校文法)で助動詞とされているものの一部です。右側にこの本での扱いを書いておきます。
食べ-た(過去・確認) → 活用形の一部
食べ-よう(意志・推量) → 活用形の一部
食べ-られる(受身) → 派生形の一部(接尾辞)
では、複合述語の作る形式の主なものをおおまかに分類しておきましょう。
例はほんの一部です。それぞれについての説明は後に続く章でします。
1.文の丁寧さに関するもの(「22.文体」)
「-ます・です」とそれに対立する形
食べます 食べる
長いです 長い
学生です 学生だ
2.テンス(現在と過去)(「23.テンス」)
食べます 食べました
長いです 長かったです
学生です 学生でした
3.アスペクト(「24.アスペクト」)
食べる
食べている/食べてある
食べ始める/食べ続ける/食べ終わる/食べかける/食べ出す
食べたばかりだ/食べたところだ
食べたことがある
4.ボイス(「25.ボイス」)
食べられる
食べさせる
食べられる/食べることができる
5.複合動詞・補助動詞・機能動詞など(「26.複合動詞」など)
走り出す/走り出る
持ち上げる/持ち上がる
走ってみる/走ってみせる
走りやすい/走りにくい
影響する/影響される/影響を与える/影響を受ける
走ることにする/走るようになる
6.敬語(「29.敬語」)
お持ちになる/お持ちする
召し上がる/いただく
7.ムード(「30.ムードについて」~「43.否定」)
依頼 行ってください/行ってほしい
勧誘・意志 行きませんか/行こう
勧め・忠告 行ったほうがいい/行くといい
命令 行け/行きなさい
禁止・許可 行ってはいけない/行ってもいい
義務・必要・不必要 行かなければならない
希望 行きたい
推量・様子・伝聞 行くだろう/行きそうだ/行くそうだ
断定・確信 行く/行くにちがいない/行くはずだ
その他 行くことだ/行くものか/行くのだ
感嘆・疑問・否定 行くか/行かない
以上のうち、1の「丁寧さ」については「文体」の問題として論じます。そのあと、様々な複合述語を「テンス-アスペクト-ボイス-複合動詞など-ムード」の順で見ていきますが、その前に、これらの複合述語を形作る際に重要な「活用」について整理しておかなければなりません。
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